(1)視覚的な質問
1-1 同じ種類の笛でも太さや長さがまちまちですが、なぜですか?
同じ種類の笛を作る時には、なるべく同じ規格の竹を選ぶようにしていますが、竹は自然素材ですので、どれ一つ同じ太さや長さのものはありません。素材ごとに指孔の位置や大きさを微調整することによって、同じ音高・音階の笛を作ります。
1-2 表面にアザや傷のようなものがあって気になります。
竹は自然素材ですので、生まれつき、あるいは、成長の過程で風雨にさらされるなどして、部分的に変色したりアザや傷が付いたりします。これらは決してマイナスの要素ではなく、木の木目に感じることができるような竹の味わいです。笛を使い込むうちに、その味わいが増して、笛の識別にも役立ちます。
1-3 太い笛と細い笛の違いはありますか?
一般に同じ調子の笛で比べた時、内径の大きい笛の方が大きな音が出る傾向があります。ただし笛によっては内径の小さい笛でも大きな音が出るものもありますので、おおよその傾向と考えてください。多くの場合、太い笛は内径が大きいですが、まれに内径の小さい太い笛もあります。また、細い笛の方が持ちやすいと感じる方もいるかもしれませんが、極端に太い笛、細い笛でない限りは、一週間もすればその太さ細さに慣れますので、あまり気にしなくても良いでしょう。
1-4 重い笛と軽い笛の違いはありますか?
一般に重い笛の方が音の密度が高く吹き応えを感じることができます。ただし、笛の音色は、素材だけではなく、歌口や指孔の形などを含めて総合的に決まりますので、おおよその目安と考えてください。
1-5 肉厚の笛と肉薄の笛がありますが、違いはありますか?
多くの笛は、見た目を洗練させるために、管尻付近の竹の表面を削って薄くしています。そのため管尻の竹の厚みから実際の竹の厚みを知ることはできません。歌口や指孔から見える断面部分が実際の笛の厚みとなります。竹の厚さと歌口の角度の関係にもよりますが、厚い竹の方が説得力のある音が出る傾向があります。また、薄い竹の方が軽く響く傾向があります。
1-6 漆塗りと人工塗料(カシュー)の笛の違いは何ですか?
漆は天然の素材、カシューは合成樹脂塗料です。漆の方が、カシューよりも深みがあり艶のある音色となる傾向があります。漆にかぶれやすい方は、人工塗料の笛が良いでしょう。◎参照→〔6-14 漆にかぶれました〕
1-7 籐巻の役割を教えてください。
籐巻は割れ防止を兼ねた装飾です。籐巻を施していても割れることはありますが、籐巻の部分で割れを止めることができます。割れがひどくなければ、音色や吹き心地を変えずに補修が可能です。
1-8 両巻(天地巻)と総巻の違いは何ですか?
両巻は笛の両端に、総巻は指孔と指孔との間にも籐を巻きます。歌口と指孔との間にも幅広く籐を巻くと豪華に見えますが、若干、音の響きが抑えられてしまいます。そのため、京師・岸極の総巻では、歌口と指孔との間には籐巻を施していません。
1-9 素竹の笛と塗りの笛とでは何が違いますか?
笛の外側については、素竹の方が指打ち音が派手で鋭い音色となります。当初は少しカスレ音が目立ちますが、吹き込んでいくうちに、音に落ち着きが出てきます。漆塗の方は、素竹に比べると初めからカスレの音が少なく透明な音が出やすいですが、少し指打ち音がおとなしく、吹き込んでいっても素竹ほど笛の成長を感じることができません。
1-10 外見だけで良い笛かどうかわかりますか?
笛の善し悪しは見た目では判断できません。笛師(銘)によって、歌口や指孔の形、音色が異なります。同じ笛師の笛であれば、おおよそ同じ傾向の笛となります。ただし、天然の素材で、かつ手作りの楽器ですので、同じ笛師の笛でも個性があります。なるべく吹き比べて選ぶことによって、自身に最適の笛を見つけてください。