(5)手入れの方法・保管方法
5-1 演奏後の手入れの方法を教えてください。
管内にホコリが溜まってくると、笛の響きが悪くなります。目安として三ヶ月に一度、湿らせた綿棒を歌口と指孔から入れて、管内のホコリを取ってください。また、歌口と指孔との間の長い部分(喉)に溜まったホコリが気になるようであれば、目安として半年に一度、水に濡らした柔らかい布(露切り等)を通しても良いでしょう。
5-2 露切り(道具)は必要ですか?
管内の露を拭くために「露切り」(布の端に紐と錘を取り付けたもの)がありますが、頻繁に使うことはお奨めできません。管内には微妙な漆の凹凸があることもありますし、なにより、紐の摩擦によって歌口付近を痛めてしまう危険性があります。
5-3 笛の保管方法を教えてください。
篠笛は急激な温湿度の変化(特に乾燥)と物理的な衝撃に弱い楽器です。保管の際や移動時などは、布袋に入れ桐箱などに収納するのが良いでしょう。エアコンの風が直接当たる場所や夏場の車の中などは特に厳禁です。笛は地べたにおかず、面倒でも必ず桐箱などに収納しましょう。予想外のタイミングで、他人、あるいは自分自身が笛を踏み割ってしまう危険性があります。また、笛を何年も吹いていない状態で放置していると割れてしまうことがあります。折りに触れて息を込めることを心がけましょう。
5-4 管内に露が溜まってしまいます。
笛を吹いた後に管尻からしたたり落ちる露は、「水蒸気の結露」である場合と「唾」である場合とがあります。冬場は特に、暖かい息が冷たい笛に触れることによって水蒸気が結露し水滴となって管内に溜まりやすくなります。初心者は唾が出やすいですが、慣れてくると少なくなります。歌口付近に露が溜まると音が出にくくなります、管尻に手拭いなどを当て笛を立てて露を落としてください。応急処置としては全ての指孔をふさいで、息を強めに吹き込むと(音は鳴らさない)、歌口付近の露が移動して音が出やすくなります。周りの物に当たって笛が破損する可能性が高いので、笛を振って露を切ることは厳禁です。
5-5 管内に水を通して大丈夫でしょうか?
漆器と同じで管内に水を通しても問題ありません。その際、表面から少なからず水が染み込み楽器を痛めることになるので、頻繁な水洗いはお奨めできません。
5-6 表面を水で洗っても大丈夫でしょうか?
一度や二度水で洗ったくらいでは笛が痛むことはありませんが、あまり頻繁に水にさらすと良くないでしょう。また、長期間にわたって吹かれている笛の表面は、手の脂などによって飴色に変色し、良い具合に指が滑りにくくなっています。表面を水で洗った直後は笛が滑りやすいので要注意です。
5-7 地元の祭で笛をお酒に浸ける習慣がありますが大丈夫でしょうか?
祭によっては「清め」と称して笛に水や酒を通す習慣がありますが、笛を痛めるので厳禁です。酒はカミに奉る献饌(けんせん)であって、塩のような清祓(きよはらい〕の効果は期待できません。これは「アルコール消毒」という連想も手伝った酒と清祓の混交行動と考えられます(塩-神饌・清祓の具、酒-神饌)。
管内に塗りのない笛の場合は、水を通すと一時的に管内が滑らかになって響きは良くなりますが、通常の篠笛は管内に漆が施されているため、あまり効果が期待できず、頻繁に水を通すという行為も現実的でありません。