(6)篠笛の選び方と教本の紹介
6-1 初心者です。どの笛を選べば良いですか(1)?
どの曲を吹くのかにもよりますが、まず初めの一管ということであれば邦楽調(唄用)の六本調子か七本調子の篠笛をお選びください。様々な日本の曲を吹くことができ、高音と低音の両方がバランス良く響く笛で、篠笛の魅力である指打ち音もしっかりと出すことができます。子供や女性の方は、はじめは七本調子の方が持ちやすいと感じるでしょう。
六本調子の篠笛の方が表現力が豊かですが、初心者にとっては六本調子の笛は少し太くて長く指が押さえにくいと感じるかもしれません。また、八本調子は細く短いため、歌口や指孔も小さくなって、音は出しやすいですが、やや音程が高いため、単調な表現になってしまう嫌いがあります。
八本調子以上の細くて短い笛ですと音が単調になり、一方、五本調子以下の太くて長い笛ですと高音の響きに物足りなさを感じてしまいます。もちろん、これらの笛が悪いわけではなく、その音高・音色が求められる曲では、対応する調子の笛が必要となってきます。
音の出しやすさ、指の押さえやすさ、音色の豊かさなど総合的に判断すると、まずは、六本調子と八調子の間に位置する、七本調子の篠笛がお奨めです。
まったく音を出したことがないという方には、プラスチック製の篠笛「篠音-しののね-」<邦楽調(唄用)七本調子>をお奨めしています。
6-3 プラスチックの篠笛は音色は?
篠笛は天然の竹を素材として一本一本手作りですので、音色や吹き心地に個性があります。また、人によっても相性が異なります。初心の段階ではどの笛が良いのか、自分に合っているのかの判断は難しいでしょう。そのため、まずは、学校教材用としても定評のあるプラスチック製の篠笛「篠音-しののね-」をお奨めしています。この笛である程度、音が鳴らせるようになってから、幾つか吹き比べの上、竹の笛を購入するのが良いでしょう。プラスチック製ではありますが、中級者、上級者が吹くと、竹の笛との違いがわからない音色でよく響きます。プラ管である程度慣れてから竹の笛を選ぶと安心でしょう。
プラスチック製の篠笛は幾つか種類がございますが、「篠音-しののね-」は笛師が型を作り改良を重ねた本格的な練習用篠笛です。昭和六十年に発売されて依頼、学校の音楽の授業を中心に愛用されています。
◎ プラスチック篠笛「篠音」→ こちら
◎教本などの詳細は → こちら
6-5 太鼓と合わせるのにお奨めの笛を教えてください。
比較的高い音が出る、六本調子・七本調子・八本調子の古典調の笛が良いでしょう。六本調子の高音部は音量も大きく深みのある音色で大きな太鼓の音にもかき消されず遠音がさします。特に大甲(だいかん)音(最高音程部分)の音の幾つかを使うと効果的です。八本調子は笛が小さいため、思い切った表現ができませんが、音程が高いため音の抜けが良く、耳につきます。祭囃子を吹かれる場合は、その祭の規定の笛で吹くのが良いでしょう。
6-6 篠笛の独奏にお奨めの笛を教えてください。
篠笛の魅力を十分に引き出すには、まずは六本調子か七本調子の邦楽調(唄用)の笛が良いでしょう。ただし、それ以外の笛が合う曲、調子が指定されている曲もあるので、まず、はじめの一管が必要ならばどの笛を選ぶか、という意味で捉えてください。味わい深い古典調もお奨めです。
6-7 桜やわらべ歌、民謡などの演奏にお奨めの笛を教えてください。
邦楽調(唄用)の篠笛が適しています。息遣いを調整すると古典調でも吹くことができ、より味わい深い表現となりますが、初心者は邦楽調(唄用)の笛の方が音を合わせやすいでしょう。
6-8 三味線・箏などの邦楽器との合奏にお奨めの笛を教えてください。
三味線や箏の曲の音高は、歌い手の音程によって定められたり、曲によっては使う音が決まっていたりします。そのため、調子の異なる幾つもの笛(主に、三本調子から八本調子くらいまで)が必要になりますが、趣味の範囲では、初めからすべての調子の笛を揃えるのではなく、必要に応じて少しずつ買い揃えるのが良いかと思います。初めの一管ということであれば、六本調子・邦楽調(唄用)が良いでしょう。
◎参考 →〔8-2 篠笛の種類と十二律の対応表〕
6-9 祭囃子の演奏にお奨めの笛を教えてください。
祭で規定の笛(調子や指孔の位置)があれば、それに従いましょう。厳密な規定がない場合には、大きな音で歯切れが良く指打ち音が華やかな古典調の篠笛が良いでしょう。
同じような仕様の笛であっても、銘(笛師)のこだわりや考え方、使っている材料、手間の度合いによって値段が異なります。そのため、値段によって笛の善し悪しを判断することはできません。実際に吹き比べてみて、好みの笛を選びましょう。同じ銘(笛師)の笛であっても、(1)材料(竹)の性質 (2)内部の塗装の種類の違い(漆かカシューか) (3)装飾の多寡(籐巻きの量、表面の漆塗りの有無)などによって、値段が異なります。値段の安い笛であっても、良い音が鳴るものもあります。
自身が気に入ったものがあれば、値段にこだわる必要はないでしょう。六本調子・七本調子・八本調子であれば、おおむね2万円から4万円前後の笛が標準で、これは、プロの奏者でも使用している笛の価格帯です。次に安いものとしては、1万円前後の笛となります。
6-13 漆にかぶれました。
体質によって希に漆にかぶれてしまう人がいます。特に新しい笛の場合は漆が落ち着いていないため、かぶれやすくなっています。科学的根拠は曖昧ですが、笛の管内に米糠(こめぬか)を詰めて、笛全体が米糠に埋もれるようにした状態で1,2週間ほど放置して漆を抜くという方法が知られています。いずれにしても、漆の成分を抜くことが肝要です。それでもかぶれてしまう場合にはカシュー塗り(合成樹脂塗料)の笛への持ち替えを検討してください。